点滅希

 
 『もしも、こんな街があったら・・・』  
    

 とある街の幹線道路、制限速度は60キロ。ここでは何の取締まりもやっていない。皆がそれを知っている。
 違法な運送業者は100キロで走り積載オーバーもして、「速くて安い」と客に喜ばれている。順法の運送業者は60キロを守り過載もせず、客からは「遅いわ高いわ」と文句を言われる。
 子供が撥ねられて「こんな危険な道路を放置するな!」と住民が訴え、審議会が開催された。有識者の答申により制限速度は40キロに改正された。
 取締まりはやらないので、違法業者は相変らず100キロで走る。順法業者は40キロで走り、あまり遅いのでとうとう注文が来なくなった。
 運送業の協会がお役所に取締りを陳情したところ「一罰百戒になるような摘発はできない。予算も人も無い。協会のリーダーシップによる業界の自浄に期待する。」とのご託宣。
 順法を守っていた業者は「もう80キロぐらいで走ってしまおうかな。」と考え始めた。一方お役所では「市民の安全を守るため、」この道を全面通行禁止にしようかと更なる改正を検討している。
こんな街があったら…。

(頑)

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