特別報告

 

一年目の「三丁目の夕日」

  関東甲信越支部 (株)東京システック 小野利器


 昨年のネオンアート展に出品した「三丁目の夕日」が協会を通じて東京タワーに寄贈されて1年少々が経過しました。
 その後の作品の状況をお伝えしたいと思います。
 実は寄贈よりちょうど1年を経過した今年の夏、ネオン設備を総入れ替えする修理を行いました。設置した作品はあくまでも当社で管理していく責任がありますから定期的に足を運んでいましたが、最近ネオン管の一部が切れたりトランスがパンクする事態が生じてきたからです。
 僅か1年足らずで不具合が生じてしまった原因は、当初の制作目的が短期の展示会用ということでデザインや点滅パターンを優先し、ネオン配線の基本を疎かにした結果です。また赤の透明管を使用したことからトランスに過大な負荷が生じることになりました。これを放置して、万一出火でも発生しようものなら大変なことになります。それこそネオンのイメージダウンにつながりかねません。
 そこでいったん作品を引き上げ、全面的に改修することにしました。
 今度はネオンが長く安全に点灯するように、ネオンガスをアルゴンガスに、高圧インバータートランスを低圧に変えました。また配線や固定方法も慎重に行い管と管との接触個所を排除しました。当初は東京タワーが徐々に建ちあがっていく状況を表現するために透明管を使ったのに着色管を使ったのではそのイメージが出せないのではないかと心配しました。しかし、結果的には点灯時の赤管の輝度は圧倒的で不点時との対比は明瞭です。以前は透明管の赤一色でしたが、今回は赤と白の着色管を交互に配したことも、より本物のタワーに近付きました。
 顧みて「東京タワーをネオンで作ろう」と決定したときは、正直無理だと思いました。複雑な鉄骨で組まれたタワーをネオンで美しく表現するのは並大抵ではないからです。でも、細部を省略したネオン管のフォルムが結構レアリティを出していて存在感があります。来館者がこの作品をバックに記念写真を撮ろうと順番を待っている姿を目にし、苦労した甲斐があったとうれしく思います。
 今回の一件で、ネオンに対する勉強不足を実感すると共に、認識がより一層深まった気がします。
東京タワーを訪れる機会がありましたら、是非装い新たに生まれ変わった「三丁目の夕日」をバックに記念撮影をどうぞ。


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