最前線シリーズ 11

 

「デジタルサイネージ ジャパン2012」を見学して


月刊『サイン&ディスプレイ』編集部 青木利典

ハーフカットパネルと透明液晶ディスプレイ
 千葉の幕張メッセで6月13日から15日までの3日間、デジタルサイネージに特化した展示会「デジタルサイネージ ジャパン2012」(以下 DSJ)が開催されました。今年で4回目となる同展の感想などをお伝えさせていただきます。
 今回は「ハーフカットパネル」と「透明液晶ディスプレイ」を展示する企業が多く見られました。「ハーフカットパネル」とは、通常の16:9の液晶パネルを半分くらいにカットしたものです(写真1)。「透明液晶ディスプレイ」とは、ディスプレイの奥が透けて見えるものです(写真2)。映像を表示しつつ、奥に展示した商品の実物を見せることができます。
写真1:16:9の液晶パネルをカットした「ハーフカットパネル」
写真2:ディスプレイの奥が透けて見える「透明液晶ディスプレイ」

 「ハーフカットパネル」は、ミニストップやデイリーヤマザキなどいくつかのコンビニで、レジ奥のタバコ什器に取付けられています。コンビニによって、メーカーや販売ルートは異なるようですが、全国でおそらく何千台という数が導入されています。最近ではかなりの大型案件だったと言えます(写真3)。このインパクトが強かったので、各社が「ハーフカットパネル」の販拡を狙って出品したのかもしれません。
写真3:コンビニのタバコ什器に設置されている「ハーフカットパネル」
写真4:プロモーションに活用された「透明液晶ディスプレイ」

 「透明液晶ディスプレイ」については、展示会以外で実際に使われているのを筆者が見たのは一度だけです。今年4月にJR品川駅構内のイベントスペースで、テレビドラマのプロモーションに使用されていました。透明液晶ディスプレイの奥にはドラマの出演者の等身大パネルが据えられ、画面には番組内容を煽る文字がスクロールしたり、時おり画面を暗転させて奥のパネルを隠したり見せたりと、透明液晶ディスプレイの特性を活かした見せ方で、駅利用者の注目を集めていました(写真4)。
 「ハーフカットパネル」や「透明液晶ディスプレイ」の展示が増えていたとはいえ、これらは展示会では1〜2年前から見かけられたものです。このたびの「DSJ」には派手で目新しいものが少なかったというのが、多くの来場者の感想だと思います。
 ですがそれは悪いことではないと思います。デジタルサイネージはハードやシステムの派手さ、目新しさをセールスポイントにするのではなく、コンテンツや見せ方も含めてエンドユーザーにとって具体的で効果的な運用法を提案していくべきだからです。メーカーはハードを作るだけ、ベンダーは商品を売るだけでは、もはやナンセンスです。
 このような視点で見たところ、筆者としては好印象を受けたブースが3つありました。
具体的かつ実用的提案が市場を拡大させる
 ひとつは(株)ITTOCANです(写真5)。一昨年設立された新しい企業で、機器・ソフト・コンテンツ製作など、各分野に専門的な知識を持つスタッフを揃えています。展示ブースにおいて紹介していた納入事例のコンテンツは見栄えが良く、お客さんのニーズに合わせて機器の選定からコンテンツ製作までやるというスタンスを明確にしていました。
写真5:ITTOCANの展示。太陽熱利用システムによる
電力供給を見える化したコンテンツ

 ITTOCANはハイエンドなデジタルサイネージの提案を得意としています。もっと簡単に導入できそうなのが、富士フイルム イメージングシステムズ(株)と中国システム機器(株)です。
 富士フイルム イメージングシステムズは様々なコンテンツサービスを提供しています。その中のひとつである「いいね!ウェーブ」というコンテンツがあります。デジタルサイネージ上に企業のフェイスブックページを表示して、ウェブ上で「いいね」ボタンが押された数だけ、親指のマークが画面の下から上に流れていくものです(写真6)。昨今のマーケティング活動では、フェイスブックのようなSNSの活用が重きをなすと言われています。時流に沿ったコンテンツであり、かつ、飲食店経営者などエンドユーザーにとっては特別な造り込みも必要なく、サービスを導入すればすぐにそのまま使えそうです。
写真6:フェイスブックと連動する富士フイルム イメージングシステムズの
コンテンツサービス「いいね!ウェーブ」

 もうひとつの中国システム機器は、葬儀の祭壇をデジタルサイネージ化する「バーチャル祭壇」という提案です(写真7)。祭壇の一部を映像化することで設置作業を簡素化し、生花などの使用量も減らせるので、コストや時間を削減できます。
写真7:葬儀の祭壇をデジタルサイネージ化することで簡略化を
図れる中国システム機器の「バーチャル祭壇」

 ここにご紹介した3社は、最終的な使用方法がイメージできる点で大いに評価したいと思います。展示会は近未来の技術やコンセプトを発表する場でもありますが、今、デジタルサイネージの市場発展に必要なのは実用的な製品やソリューションです。



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