リポート

事故は起こるべきして起こった 続編
笹子トンネル事故の原因を再考する
NEOS編集顧問 小野博之

  笹子トンネル事故の原因に関しては新年号「リポート」で述べた。事故では9人が犠牲になったが、その後遺族が提訴に踏み切ったというニュースがあった。その訴訟相手が中日本高速道路などとなっている。つまり、現在のトンネルの持ち主や管理者である。私は一番の責任はトンネルを設計した日本道路公団にあると考える。なぜなら事故の原因は天井を吊り構造にし、吊りボルトに全荷重を託したことと、そのボルトがケミカルアンカーだったことにあるからだ。
  奇妙なのは吊りボルトで持たせるなら、なぜコンクリート打設時にアンカーボルトを埋め込んでおかなかったかということである。あえて後打ちアンカーにせざるを得なかったことに何らかの理由があったように思えてならない。
  コンクリート打設後にボルトをセットするからにはケミカルアンカーしか採りようがないが、これは建築では使用が認められていないことは前号に記した。少なくとも上向き使用は厳しく規制されていた。
  その原因はアンカーボルトを固着させる材料が液体だからだ。水平使用においても薬液が流れ出てしまう可能性は大いにあり、そのためこのアンカーを施工できるものはそれなりの資格を持ったものに限定された。笹子トンネルでケミカルアンカーで施工されたことに驚いたが、しかも上向きアンカーであったことに考えられない思いであった。推測するに公団が何か特別な工具を開発し、それを使用して工事がなされたのではないかとまで考えた。
  しかし、今年2月に入った新聞では接着剤不足が報じられている。つまり、ボルト全長にわたって充填されるべき接着剤が下端部にしか満たされていなかったことが判明した。新聞ではそれが大規模事故の主原因ではないかとし、これをずさん工事と決めつけている(2月1日付け朝日新聞)。しかしずさんなのではなく、液材ゆえに漏れ出たのだろう。つまり私が想像した秘密兵器はなかったというわけだ。
  訴訟になったとき、事故の原因に関しても技術的な問題をもっと究明してもらいたいものだ。そのひとつはなぜコンクリート打設時に埋め込みアンカーがなされなかったのかということで、もう一つはなぜ吊り構造という選択しかなされなかったかという2点だ。
  この事故においてはなぜか世間の関心が根本原因に向かわず目先のことしか追っていないように思えてならない。それとも責任ある機関が隠ぺいを図るべく工作しているということか。


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