特別寄稿

 屋外広告物による都市ブランド形成を考える 〜京都市中心市街地を対象として〜 
関東甲信越北陸支部 興和サイン(株) 橋芳文


  都市環境デザイン会議(JUDI)屋外広告物プロジェクトチームで京都の屋外広告物研究をおこないました。そして、この研究成果をまとめた「屋外広告物による都市ブランド形成を考える〜京都市中心市街地を対象として〜」という冊子が完成しました。冊子は、下記のURLからダウンロードできますのでダウンロードしてご覧いただければ幸いです。
http://www.judi.gr.jp/archives/project/2013-01_okugai.pdf
  都市環境デザイン会議(JUDI)は、都市環境デザインに係わる各分野の専門家が所属しており、「日本学術会議」の「日本学術会議会則第三三十五条」に規定する「日本学術会議協力学術研究団体」です。
  僕は、共同代表として、JUDI関東の立場でこのプロジェクトに関わらせて頂きました。プロジェクトは、NPO法人京都景観フォーラム、NPO法人ストリートデザイン研究機構のメンバーが中心となり、学識者、技術士、一級建築士、サイン事業者等さまざまな立場の専門家が集まって実施されました。
  屋外広告物の問題に関しては、研究の蓄積が少なく未だ課題が多い分野です。
  景観法とからめて話をさせていただくと、景観法は、「美しい国づくり政策大綱」(国土交通省2003)をベースにしています。美しい国づくり政策大綱は、戦後に築かれた文化に対し、社会資本は、量的に充足されたが、電線、ブロック塀、不揃いなビル、看板、標識が雑然と立ち並ぶ様子は、「美しさとはほど遠い光景」と評し、それを改善するために行政の方向を美しい国づくりと定め、自然との調和を図りつつ整備するという方針です。
  ですので、景観法においては、「美しい」「醜い」という相対的な価値基準が絶対的な基準のようにも見受けられます。ゆえに、景観法の施行と、それに伴う屋外広告物法改正の影響から、屋外広告物は景観の阻害要因とされています。
  当然のことながら、サイン事業者だけでこの屋外広告物の問題をなんとかしようとしても壁にぶちあたります。
  ですので、都市計画家、建築家、色彩の専門家、市民、地域の協議会など、多様な立場の多くの人たちに協力をしてもらい、皆で知恵を出し合いながら、屋外広告物のことを考えていくことが重要だと考えています。
  今回の研究では、姉小路、三条通、木屋町、先斗町と4つの街路の屋外広告物を調査しました。調査の内容に関しては、冊子をご覧いただければと思いますが、看板に厳しい京都で、唯一、看板を地域資源として活用し、看板の似合うまちづくりを展開しているエリアがあります。
  姉小路界隈です。俵屋、柊家などの名旅館や100年以上の老舗があるところです。老舗には、山本竟山、北大路魯山人、富岡鉄斎、武者小路実篤などが書いた文人墨客の看板が掲げられています。歴史都市の市街地においても看板が景観イメージの向上に貢献できることを姉小路界隈の看板は教えてくれます。建物と看板が調和した町屋の景観は美しく職住一体のまちの息づかいが感じられます。
  京都に行く機会があったら、是非姉小路界隈を訪れてみてください。

   
   
 
姉小路界隈の景観  

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