最前線シリーズ

 

多言語案内サインは日+英、ピクトが基本4カ国語表記は視認性が重要

旬刊「総合報道」新聞編集部部長 鈴木智之
 
 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下オリパラ)の開催まであと5年半に迫りました。
 多くの観光客の立ち寄りが想定される場所では、多言語表記の案内サインが求められ、いま全国各地で整備が進められています。昨年3月にはオリパラに向けた多言語対応協議会が立ち上がり、官民一体となった基本的な考え方などの検討も始まりました。そこで、今回は大手サイン製作会社を中心に今後の多言語対応案内サインについてリポートします。
 多言語対応協議会は、オリパラ大会開催時、開催後を見据え、多様な主体(例:国や地方自治体など)が、表示・標識等の多言語対応に取組むことで、外国人旅行者の円滑な移動、快適な滞在を目指した活動をサポートするため、設立しました。基本は日本語+英語及びピクトグラム(絵文字)対応です。ただし、需要や地域特性、視認性などを考慮し、必要に応じて中国語、韓国語などを含めた多言語化も実施可能。しかし、実施の際はユニバーサル・デザインや視認性、統一性、連続性の確保、景観や美観への配慮を挙げています。また、誘導サインの形状は外国人へのアンケート調査から、母国で見慣れた「矢羽根型」が8割弱を占めました。
 では、良い多言語案内サインとはどのようなものでしょうか?
 皆さんが、街中で見かけることの多い誘導サインは、東京駅まであと1q、大手町駅まであと800mといった目的地を記載。日本語の下に英語、中国語、韓国語が併記されています。しかし、「視認性を考えた際、各国の言語をそれぞれにまとめ、分かりやすくレイアウトした方が読みやすい」という声もあります。
さらに、現状の5カ国語表示にとどまらず、もっと増えるのではないかという意見では、「6カ国、7カ国語表示の可能性もある。アラビア語を望む声もあるが、こちらは右か左へ文字を読むタイプなので、日・英との併記は難しい。これまでとは全く違った表記方法が望まれる」といった見方も。
 日+英、ピクトは基本に、それ以上の多言語は表示面が大きければ問題ありません。しかし、限られたスペース内に全言語を入れてしまうと、視認性を配慮したものとは言い難いでしょう。
 また、多言語表記にすれば、必ずしも外国人旅行者が利用しやすくなるというものでもありません。案内サインの近くにインフォメーションセンターの設置や、パンフレット・リーフレットなど印刷媒体での多言語表記、困ったときの人的補助も有効的です。
 一方、シンプルな案内サインでは表示面にQRコードを記載。それをスマートフォンでかざすと、端末ユーザーの母国語が表示されるサービスも始まりました。多言語音声翻訳システム(スマホアプリ)の活用も一つの手法です。
 様々なサイン設計・製作会社に話しを聞くと、多言語対応に異論はない意見が大半を占めた一方、視認性や統一性、連続性の確保には一考を求める声が多かったのも事実です。
 国が進める観光立国に多言語案内サインは欠かせませんが、地域特性に応じた展開も必要ないでしょうか?

*本記事は「総合報道」2015年1月5日号1面掲載『2020東京五輪と多言語サイン』の記事を要約したものです。



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