サインとデザインのムダ話

 
JSAロゴマークデザインへの想い

久田邦夫
株式会社GKグラフィックス
公益社団法人日本サインデザイン協会 常任理事
公益社団法人日本グラフィックデザイン 協会会員
久田邦夫さん

 2016年5月27日にアメリカ合衆国大統領のバラク・オバマ氏が核兵器の廃絶を訴えて広島平和記念公園に訪問した際、すぐ近くのホテルで懇親会があり、高層階からガラス窓越しに観覧する機会を得ました。通常では体験できない貴重な機会に恵まれ興奮さめやらぬ場で、日頃からお世話になっている方から、突然に「JSA」ロゴマークデザインのお話をいただきました。御依頼内容は「全日本ネオン協会」から「日本サイン協会」へと協会名称が変更になることに伴い、英文表記が「Japan Sign Association」となり、今後の一般的な呼称は、英文の頭文字をとり「JSA」としていくため、そのロゴマークをデザインして欲しいとのお話でした。
 今回の協会名称変更で最初に気になったことは、「全日本」から「全」がとれ「日本」となった事でした。これまでの「全日本ネオン協会」の名称を踏襲し「全日本サイン協会」とする事も出来たはずです。なぜ「日本サイン協会」としたのか?「全日本」ではなく「日本」と名称変更した想いはどこにあるのか?
 そこで「全日本」と「日本」の違いについて調べてみると、バレーボールは「全日本」、サッカーは「日本代表」と呼称されており、その違いは諸説いろいろありました。その中で納得できた説は、「西日本」代表といえば西日本に住む人々から選ばれた代表、「東日本」代表は東日本に住む人々から選ばれた代表。「全日本」代表は東も西も含めた日本国に居住する人々からの代表。「全日本」は日本国土(地域)を意味し、場合によっては外国籍の方が混じっても良いとの考えでした。そう言えば「全日本ネオン協会」も「関東ネオン業協同組合」と「関西ネオン工業協同組合」が一緒になった協会であったなあと思いを馳せながら、さらに納得できる説を発見!ラグビーは外国籍の方が混じっても良いメンバー構成なので「ラグビー全日本」。サッカーは日本国籍のみのメンバーで構成されており「日本代表」となっている。
 ここで気持ちがスッキリし、「全日本」と「日本」の違いについて自身で再解釈してみました。「全日本」は国内に向け「ひとつになっていこう」というメッセージを含めた言葉。「日本」は日本の代表として国外に向けてメッセージを発信していく言葉。「全日本ネオン協会」から「日本サイン協会」に名称変更した想いは、国内でひとつになっていたネオン協会が、これから日本を代表する協会として新たに躍進していく志を顕したものではないか!?と解釈しました。
 そして次に重要な(実はここが一番重要かとも思いますが)名称変更は「ネオン」から「サイン」に変更になった事です。ただしこの変更は多くの方々にも共感を得ることができると感じました。私の中でネオンと言えばアメリカを代表するネオンアーティスト:リリー・ラキッチ(Lili Lakich)の「ELVIS」。心震えるカッコ良さで今でも印象に残っています。そしてネオンサインは国内外各所で街並みを彩ってきましたが、近年、LEDを含めた新技術の開発により街並みの彩りも変化してきました。「ネオン」から「サイン」への名称変更は、ネオン素材だけにとどまらず、新技術等も積極的に取り入れ、新しい時代に向けて幅広いジャンルに取り組んでいく姿勢の顕れかと感じました。
 そこで「JSA」ロゴタイプは、日本を代表する協会として、これまで築いてきた資産(昨日今日出来た組織ではない!)を活かしつつ、サインという幅広い新たな領域で、未来に向かって活動していく姿をデザインコンセプトとしました。「J」の先端の赤丸は日本を顕すと伴に、新しい協会のはじまりに灯をともすイメージとしました。「JSA」のロゴはネオンチューブをイメージし、ナール系書体(文字のエッジが丸い)の一筆書き。ただしロゴの書体はクラシックではなく、オシャレで未来志向のデザインとしました。
 この度は「日本サイン協会」の新しい未来へのスタートのお手伝いできる機会をいただき嬉しく思っています。末永く「JSA」ロゴマークを活用いただけると幸いです。よろしくお願い致します。



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