トラブルに学ぶ

 

屋外広告「えーっ、それおかしくないですか??」(関東編)

  中部支部 アバンギャルドフジコウ(株) 伊藤康司

 
 弊社はお蔭さまで、様々なお客様にお取引を頂いています。お客様の中には多店舗展開をされている会社様が何社かあり、また、その中で全国展開をされているお客様もお取引をさせて頂いていていますので、弊社の屋外広告の登録は全国1都1道2府40県に及んでいます。業務の中で「屋外広告物許可申請書」のかかわりは日常的です。
 私がサラリーマン時代の30年以上前は「県条例」「政令指定都市条例」を押えていれば充分でしたし、「違反でもいいから大きな看板、派手な看板…」と、今では考えられないお客様からの要望に応えるために「建築検査後でオープン日までの間に取付しよう」とか四苦八苦していた時代から考えると、現在の屋外広告物許可申請への理解はお客様はじめ設計士、建築担当者はじめ格段の進歩だと思います。
 背景には地方分権という大きな潮流から始まり、屋外広告点検報告書の重要性の高まりまで様々な流れがあると思います。
 現在ではお客様から出店に伴いサイン計画のご依頼を頂くと最初に手をつけるのが、計画地の屋外広告物条例の確認作業です。
 確認作業は弊社では電話でのマニュアルに沿って、行政の担当者を相手に行います。
 現在では高さ、面積、数量だけでなく彩度まで、様々な基準があります。変な話、「この町でそこまで厳しい??細かい??」と云うようなケースもあります。なんとなくあの町なら派手で大きな看板ばかりだから大丈夫だと思っても、条例は平成28年施行というような事があって、先入観なしでヒヤリングする必要があります。
 そうした仕事で経験した中で、特に貴重だと感じる出来事を少しご紹介させて頂きます。
 これは関東のとある市での事です。壁面広告がメインの店舗でしたので、いつも様に事前に面積、数量、色等々の他に壁面から突出しない、開口部を塞がない等ヒヤリングしサイン計画をし、お客様の承認を得て製作に入りました、並行する形で屋外広告物許可を行いました(弊社は郵送をメインにしています)。そこで、郵送後暫くで役所から「図面を拝見しましたが、壁面は全てガラスですね…」と一報が入ったのが事の始まりでした。
 その店舗は昨今多い前面がカーテンウォールの外観でしたので、壁面広告はガラス面へ取付けるしかなく、サイン計画では当然、面積、数量、色彩を条例に適合しています。
 以下、やり取り
「建物のガラス部分は開口部なので壁面広告はNGです」
「えっ、でも壁面広告が取付可能なのはガラス面しかないですが…」
「○○県屋外広告物条例にはそうなっています」
「しかし、そうしたら、この店舗はガラス面しかないので壁面広告は取付が出来ないと云う事ですか?」
「そうです…」
 もう、冷や汗がびっしょりです、当然、製作にかかっていますし、何よりも事前にヒヤリングし適合したサイン計画をご提案するという弊社の根本的な信用にかかわります。
 後日、出向くこととなり、その間に、色々調べあげ、その骨子は、壁面の開口部とは建築基準法的には外壁(構造壁)以外の部分は開口部と定めるが、屋外広告での解釈では例えば、窓、消防隊の進入口、壁がない部分(部分的な通路等)を塞ぐのはNGであって、FIXのガラス面は実質の外壁であるのでガラス面への取付はその対象外である、とあります。
  弊社は、「市中を見渡してもそうした屋外広告物は多々ある、全国のコンビニの自動扉にはロゴが貼ってある、更におかしいのは同じ県条例で県内の別の市ではこのケースは適合としている」等々と理論武装して、喧々諤々担当者、またその上司とやりあいましたが、「ガラス面はダメです」の一言で一蹴されてしまいました。失意の中、帰ろうと役所の自動扉を通り抜けようとしたとき、ガラスの自動扉にはナント「○○市役所南口」と表示してあり、さらに外(市役所の敷地内)に出てみると地場の地銀のATMがあり、その自動扉には地銀のロゴが大きく貼ってありました、勿論、許可不要の表示面積ですが、だからといって違法な広告物を表示していいものでもありません。
 そこで私は「よしッ」となって窓口にもどり、そうした点を指摘しました。「役所内でもガラス面に商標が表示してある、ガラス面は不可という解釈運用は拡大解釈過ぎである」と論を張りました、が、「ご指摘ありがとうございます。改善します。あくまでガラス面は不可です」と役所の担当者も公務員の鏡の様な方でした。
 結局、お客様へ平身低頭あやまり、幸いガラスが透明度の高い製品でしたので、内貼でも比較的訴求力は下がらなかったので、全てを内貼へ変更し(当然、弊社の自腹)事なきを得ました。オープン後暫くして市役所を訪れましたが、残念ながら改善はされていませんでした。
 こうした、一般の方にはわからない、悲喜こもごもの背景があった看板は多く存在しているのではないでしょうか。
 これから先も「そんな規制があるんですか…」という経験を重ねながらコンプライアンスに努めていきたいと思っています



Back

トップページへ戻る



2019 Copyright (c) Japan Sign Association