ネの字通信

 
 看板に秘められたエピソードを楽しむ  
関東甲信越北陸支部 広報委員 O

 神奈川県横浜市では、魅力ある景観をつくる屋外広告物を「横浜サイン」と名付け、これを広める取組みを2013年から進めている。そこで毎年3月頃に写真展などの催しが実施されていたのだが、今年は新型コロナウィルスの影響で10月に開催されることとなった。
  開港により栄えた歴史を持つ横浜は、西洋文化を取り入れた建物により、異国情緒漂う街並みが今もなお点在する人気の観光地でもある。晴れた日にそんな街をゆっくりと散策しながら素敵な看板に出会うのもきっと楽しいだろう。
 今回の「横浜サイン展2020」では約70点の看板の写真が展示されていた。その内の数点にはオーナーによる看板デザインの由来やエピソードが添えられてあり興味深い。素敵な看板は見ているだけでも心和むが、その背景にある物語を知ればもっと愛着が湧いてくるというもの。長距離を歩くことなく沢山のサインを見ることができたが、誌面の関係で写真1点とエピソード1点のみ紹介したい。

 「Namak Cafe」
  ナマクとはインド・イラン語で塩=魅力という意味で、いきもの全てにとって大切な、地球のエレメントである塩にあやかって店名としました。飲食店であると同時にヒンドゥークシュ山脈産出の岩塩の輸入販売も行っています。
 若い頃世界を放浪し、その後遊牧部族民絨毯屋を経て自営を始めました。絨毯屋時代の友人にペルシャ語のカリグラフを書いてもらいました。高いところの車道側に向いた看板は「猫飛び出し注意!」警告灯です。お店の前の車道は裏道のせいか車やバイクが飛ばして通過します。
 35年ほど前に飼っていた猫を車にひかれて亡くし、その後何匹もひかれて死んだ猫たちを弔ってきました。前を通過する車の運転手が看板を見て少しでも減速してもらえるのではないかと思って掲げました。なのでこのネオンだけは定休日でも点灯しています。デザインは写真家のAさんと現代美術家のKさんとの共作。
 もう一つのOpenネオン看板は、バンコクのプールバー経営者の友人に作ってもらい、飛行機で手持ちし、トランスを変えて設置しました。

(途中一部省略させて頂きました)

 と、このように一つのお店の看板には思いやエピソードがきゅっと詰まっているものである。そんなことも楽しめる今回の「横浜サイン展2020」であった。



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