サイン屋稼業奮戦記

 Vol.150
サインで街にワクワクを!
    中国支部 ケイズハウス(株) 児玉 治

児玉  治さん 私が独立開業したのは、今から23年前、1998年の4月です。
 それ以前の私は岡山県の西部でシルク印刷の会社で職人として働いていました。
 自身が30歳になることを機に、郷里の島根県出雲市に帰り独立をしようと考えてのことでした。
特に営業職の経験がない私は、シルク印刷の知識と技術だけでなんとかなると考えていました。しかしその考えは大間違いであることに気が付き営業活動に力を入れました。多くのシルク印刷業者がそうであると思いますが、殆どが下請けだと思います。ところが時はインクジェットやパソコンが普及途上の真っただ中、日進月歩で性能を競い合っていた時期でしたので、都心部ならまだしも、島根県内の民間での発注数量は少量多品種のものが多く、シルク印刷の需要は見る見るうちにインクジェット市場に飲み込まれていきました。
 シルク印刷は先細りの中、弊社では2年目からインクジェットを導入し出力サービスを始めますが、先は見えています。“資金があれば誰でもインクジェットを導入できる”為にいずれ価格競争になる事は目に見えていました。案の定市内のほとんどの業者にインクジェットが導入されたのはそれから3年後でした。
 もともとモノ作りが好きで始めた商売なので、何か独自のものが有ればと模索する傍らでいろいろな勉強会へ参加もしました。そんな中、仕事が義務のようになってはいないか?もともとこの仕事が好きで独立までしたんじゃなかったのか?と自問しました。
 そして好きなことで楽しく仕事がしたい、もちろんその中にはものづくりに携わる事が前提となっています。サインで街にワクワクを!と、島根県という人口の少ない地方の街からワクワクするような街づくりのお手伝いができないか?そんな思いに共感してくれたスタッフが一人、また一人加わり、今まで以上にサインの仕事もこなしながら、新しい取り組みをとして地域の観光情報サービスを立ち上げ、掲載店を募集し観光客に検索してもらうデジタルサイネージ事業を展開してきました。
 順調に進んできた新事業でしたが昨年の2月になるとシンガタコロナウィルス?ナニ?コロナカ?ナニ?という現実と向き合うことになりました。観光産業は壊滅状態、飲食店は閑古鳥が鳴く状態、そんな状態では加盟店様から広告料をいただくことも出来ず、やむを得ず4カ月間料金をいただかないことにしました。飲食店や小売店と密接にかかわる事が多い業界として、途方に暮れるしか無いのかと思いました。しかし何とか飲食店や小売店さんに元気を出してもらうアイディアは無いか?自分たちで何か出来ないか?社内でミーティングをして、まず出したのは【コロナに負けるな!】というステッカー(原価は大したことはない)を作って無料で配布することでした。田舎なのでそんなにたくさん必要ではありませんので、あくまでも取引のある飲食店、小売業を中心に配りました。次に市内でアルコールが入手出来ないところも有った為、弊社で洗浄用に使っていたエタノールを希釈することで代用できることを確認して、原価で販売することにしました(緊急時のみ、昨年7月で終了)。少しでも安心してお客様に来ていただけるお店作りをしてもらいました。
 他にもアクリルパーテーション、二酸化チタンのミストによる抗菌コーティングなどなど、ミーティングを繰り返し、その結果スピーディーに行動に移し、なんとか取引先も一つも廃業閉店することなく今に至っています。(だからと言ってウチのおかげというわけではない)
 私たちが暮らす島根県出雲市は人口17万人ほどの小さな地方都市です。主な産業は出雲大社(いずもおおやしろ)を中心とした観光産業です。ここ10年で宿泊施設も増え周辺の町村もサービスを充実してきており、鳥取県西部から島根県東部で一つの観光コースとして売り出しています。その観光客向けのサービスの向上を目指して、デジタルサイネージやLEDサインを通して、観光しやすく楽しい街、歩きやすい街を作るために私たちがどのように関わることができるのか、観光客を迎える立場から人口17万人の“ワクワクする街”を目指して今後も挑戦していきたいと思います。



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