ネオンについて語らせて

 

謎のネオンに迫る

  NeonTuber


 今回は、知る人ぞ知る「日本のネオン」という書籍をまず冒頭にご紹介します。この本は今から44年前の昭和52年に、当時の全日本ネオン協会で出版したものです。会社の書棚にあるという古くからの会員さんもいらっしゃるのではないでしょうか。この本は大変よくまとめられており、出版当初までのネオンの歴史や技術についての記録としては唯一の貴重な資料ではないかと思われます。ネオン業界発展と深い関係のある協会の歴史にも触れられていて、関係者にとっては読み物としても楽しめるものと私は思います。今の若い世代の会員の中にはおじい様の代にあたり、ご存知のお名前も多数ご登場されていますので、書棚に眠っていたら是非手に取ってページをめくってみてはいかがでしょうか。尚、この本は非売品につき今では入手しづらいという点でも希少価値があると思います。
 さて、先日協会事務局にNHKの番組制作会社から問合せのメールを頂きました。その番組とは「ザ・プロファイラー〜夢と野望の人生〜」で、ソニーの創業者である井深大を特集するというものであり、井深氏が発明したとされる“走るネオン”とはどういったものかという質問でした。“走るネオン”?いままでに聞いたことがありません。なんでも井深氏が早稲田大学在学中に研究し、1937年のパリ万博で賞をとったという話です。恥ずかしながら不勉強で井深大氏について知識がない筆者は、まずウィキペディアでそのエピソードを検索したところ、卒業後に就職したPCL時代に万博へ出品したとありました。このPCLとは映画製作会社である写真化学研究所のことを指し、現在の東宝やソニーグループの前身となった会社であります。因みに余談ですが偉大なる井深氏が東芝の採用試験に落ちたということも書かれていました。
 話を“走るネオン”に戻します。質問を受けた協会では残念ながらどのように光るネオンなのかは分からないと回答せざるを得ませんでしたが、実は「日本のサイン」にそれに該当するであろう記述があったことに南都事務局長が気付き、NHK側へ資料提供しました。以下日本のネオンからの引用です。

 昭和八年、東京府下砧村の東宝撮影所(P・L・C)の電気室で、高周波を利用した完全流動ネオンが開発された。装置のバリコンを動かして周波数を若干変化させると、光芒に任意の伸縮運動を生じあたかもネオンが流動しているように見える。これは世界で初めて開発したもので、フランスなどに持って行かれて珍しがられた。わが国ではこの特許を譲り受けて、戦後流動ネオンとして製作展示したが、大きいものは電波法に抵触する恐れがあり、あまり普及しなかった。

 このような証言がしっかり記録されている「日本のネオン」はウィキペディア以上に素晴らしいと改めて感じた次第です。この一件、NHKの番組で紹介されるかは定かではありませんが、流動ネオンの映像がない限りは私たちの想像に頼るしかありませんね。


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