面白ブックレビュー

 
「漢字と日本人」
高島俊男著 文春新書
 ことばは本来、音が本体で文字はその影、副次的なものだ。ところが日本語は、たとえば「センコー」と聞いたらその刹那、文脈から選考・先行・専攻・線香・閃光…の「文字」を頭の中で瞬時に検索して意味をつかむ、つまり文字なしでは成り立たないという、世にも珍しいタイプのことばなのだった…!
 これは、和語(やまとことば)が成熟する前に漢字が入ってきたことによる。漢語にとって漢字はオーダーメイドみたいなもので完全にしっくりくるが、和語と漢語は相当違う言語であり、かくしてとてつもない力技によって、漢字は和語に組み込まれてきた。
 「11月の3日は祝日で、ちょうど日曜日です」といった文は、日本人が読むなら造作もない。しかし外国人からしたら神業だ。なにしろ4へん出てくる「日」の字は、すべて読みが異なっているのだから。
 そんなこんなで、日本語のアクロバティック加減に圧倒されます。
U.Y.


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