リポート

3年ぶりの祭り開催!!
 
2022徳島市阿波おどり
四国支部 (株)徳島ネオン 本久智一
 新型コロナウイルス感染症が2020年に世界で初めて中華人民共和国湖北省武漢市で確認され、日本でも爆発的に流行してしまいました。そのようなコロナ禍により全国の祭事やイベントは軒並み中止を余儀なくされました。
 約400年の歴史を持つ徳島市阿波おどりは、全国でも最大規模を誇り毎年8月12日から15日までの4日間で、のべ100万人以上の観光客を呼ぶ、日本の伝統文化を代表する三大盆踊りですが、そんな徳島市阿波おどりも新型コロナウイルス感染症の前年(2019年(令和元年)は、8月12日〜15日の4日間のうち台風10号接近により、後半の2日間が中止となりました。そして翌年の2020年(令和2年)は新型コロナウイルス感染拡大により、戦後初めて4日間中止となりました。
 翌年の2021年(令和3年)は運営組織が徳島市を中心とした阿波おどり実行委員会に大きく様変わりし、阿波おどりの火を絶やしてはいけないとの思いにより「2021阿波おどり〜ニューノーマルモデル〜」と題して、通常の開催期間で屋外での開催は中止としホールのみの公演となり、最終日にはグランドフィナーレとして徳島市内の徳島陸上競技場において特別公演(無観客)として、全世界にオンラインで配信する阿波おどりを開催しました。
 そして今年2022年(令和4年)、徳島市や徳島市内の経済団体が中心となり構成された阿波おどり実行委員会が結成され、新型コロナウイルス感染症アラートに対応するべく何度も何度も協議を重ね、7月末に約3年ぶりに有観客での最大規模での開催を決定しました。
 といっても今年は徳島市内に有料演舞場が2ヵ所(通常は4ヵ所)、無料演舞場が3ヵ所設置(客数も通常の7割程度)、市内の中心部の通行止めも通常の面積の70%ほどと、感染症に対する消毒や検温実施なども実施された中での開催ではありますが、本当に待ちに待った3年ぶりの屋外での開催です。私も有名連と呼ばれる踊り手グループに所属しており、踊り手にとっては舞台での演出とは別で1年にたった4日間しかない屋外での阿波おどり。踊り手にとってはこのために1年間練習してきたといっても過言ではありません。
 8月12日徳島市阿波おどりの初日、徳島市内の演舞場のうち最大規模を誇る『藍場浜演舞場』では有名連『阿呆連(あほうれん)』による小さな手持ち提灯を持ってダイナミックな暴れ踊りが有名な男踊り、蝶のように舞う女踊りから始まると観客から一斉に拍手が起き、踊り手と一体となって会場の雰囲気は最高潮に盛り上がりました。
 また、阿波おどりの醍醐味と言えば地位や名誉は関係なく開催中だれでも参加できる『にわか連』というのがあります。阿波おどりの「よしこの」(音楽)には『踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃソンソン』というフレーズがあります。阿波おどりを観るのも楽しいですが、観たらやはり踊ってみたいもの!!
 そして開催中毎日有料演舞場のフィナーレでは、いまや阿波おどりの代名詞でもあります『総おどり』が行われました。
 今年は天候にも恵まれ4年ぶりに4日間開催することができ、約46万人の人出がありました。
コロナ前の徳島市内阿波おどりの人出よりも少なかったですが、3年ぶりの徳島市内の阿波おどりの開催はコロナ禍で経済的にダメージを受けた業種にとっては、いい経済効果が生まれたと思われます。
 来年はぜひコロナ前の通常開催で、県外からも感染症を気にすることなく参加ができるようになり、再び笑顔が戻りますことを心から願っております。


YouTube動画(JRT四国放送公式チャンネル)
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御柱祭
関東甲信越北陸支部 小野利器
 コロナ禍で多くの行事が自粛を余儀なくされてきましたが、全国各地のお祭りもその一つではないでしょうか。そんななか、苦難を乗り越えて開催が実現したお祭りに諏訪大社の御柱祭があります。
 御柱といえば日本三大奇祭の一つに数えられ、七年ごとの開催であり、これが何と平安時代から続く伝統祭です。コロナごときで中止や延期はあり得ない、と地元関係者は強く思っていたに違いありません。けれど、屋外といえども人が揉みクシャになる密度です。テレビで報道される木落としのシーンでは、死者が出るほど危険な祭りとして世間から目をつけられています。地元関係者の話では、祭り本番までは何が何でも揉め事など起こさず、ただひたすら大人しくしているよう密かに勧告令が出されたとか。
 さて、その甲斐あってか御柱祭は5月14日(土)〜16日(月)にかけ、予定通りきっちり開催されました。
 生まれて初めて御柱祭を見る私でしたが、地元の有力企業である富士ネオン椛纒\の御子柴さんのご案内に与り、いろいろと教えてもらい、お陰様でとっても楽しい一日を過ごすことができました。ここで、御柱祭というものがどのような祭りであるのか簡単にご紹介します。
 御柱祭は平安初期から1200年も続く大スペクタクル神事であります。開催地である長野県諏訪市には四つのお宮を持つ神社が建立されており、全国の諏訪神社の総本山なのであります。そして祭りの最大の使命は、巨大なご神木を各お宮の四隅に突き立てることであり、この力でお宮を守る結界を張るというものです。その16本のご神木は山から切り出したもみの木を一年間寝かせ、里まで引っ張り下し、更に垂直に立てるまで、これ全て氏子とよばれる人の手によって行われる、まさに超ハードな肉体労働祭なのであります。
 私が訪れたのは三日間の祭りの二日目で、見どころは御柱の里引きと曳き立てでした。曳き立てはワイヤーを少しずつ引っ張って、一本当たりかなりの時間をかけて進めます。里引きも1本20メートル、重さ8トン近くある巨木を滑車も無しに休み休み引きずるため、かなりじれったい速度で進みます。掛け声は「よいさ〜、よいさ〜」です。止まっている間、特別にご神木に乗っかって記念写真を撮っていただきました。ご神木に土足で乗るなど罰当たり!と思いきや、いいのだそうです。
 新しいご神木は先端を少し削るのですが、その削りカスにもご利益があると、人々はこぞって持ち帰ってました。また、交代した古いご神木は切り刻まれて飾られたり、何かを造る材料になっているそうです。ただの木でも一度神が宿れば価値が生まれ、お金にもなるものです。卑しい考えですが、いまは何でもいいからお金が回り、経済が好転して欲しいところです。今回は露店も多く出てましたが、そもそも祭りとは、副産物としての経済効果も含んでいるものではないでしょうか。

 
長崎くんちもってこーい 〜コロナ禍を耐えた長崎の場合〜
関東甲信越北陸支部 岩波智代子
 寛永11年(1634年)から続いている長崎くんちは、重要無形民俗文化財、この度のコロナで中断されましたが、2019年まで385年も続いた長崎の氏神「諏訪神社」の秋季大祭で、毎年10月7日から3日間、町を挙げて催される長崎っ子の大好きなお祭りです。
 どれくらい大事かというと、昭和20年8月9日長崎に原爆が落とされたその秋にさえ、まだ2カ月しか経っていないというのに、その上原爆や二次火災で全町焼失や破損した町がたくさんあったというのに、丸山東検番の芸妓衆によって奉納踊りがなされたという記録があります。当時の長崎新聞(8日朝刊)には、「どこで伝え聞いたのか、どっと押し寄せた市民の群れが長坂(*1)に鈴生りになって…」とあり、そんな苦しい時にあっても長崎市民はくんちの開催を待ち焦がれていたのです。まさにこの祭りは長崎市民のソウルフェスティバルなのです。
 「なのに」です、新型コロナでとうとう長崎市民は3年連続して、出し物の奉納を諦めたのです。毎年6月の小屋入りから始まって10月の本番まで、当番の踊町の人々は仕事や勉強もそこそこに連日夜遅くまで稽古に励みます。くんちは全国の祭礼の中でももっとも稽古が長い祭りなのです。まさにくんちバカと言われる所以ですが、その激しい練習があればこそ、意気が合った素晴らしい演技を披露できるのです。
 したがって「三密をさけましょう」というコロナ対策はまさにくんちと相容れないのです。小屋入りから本番までの厳しい練習が立派な演技を支えているのです。街角に聞こえてくる囃子の音、これを聞くと長崎っ子はソワソワしてくるのですが、くんちのないこの3年間は当たり前ですが、稽古の囃子は聞こえてきません。踊町の人でなくても、それはそれはとても寂しい3年間でした。そこで、くんちなしの3年目を迎えた今年は、苦肉の策とも言えるイベントを考えだしたのです。
 それが、43踊町揃い踏みの「ながさき大くんち展」なのです。もともと一回のおくんちに登場する踊町は5〜7町でそれが7年毎に繰り返されるのですが、一年だけでも十分豪華なのに、全踊町の出し物が全て一堂に会するとなると、正に絢爛豪華の極みです。
 会場は、今年見本市会場として新しく完成した出島メッセの1階コンベンションホール3800平米の大会場に所狭しと展示された43町の出し物は、有史以来の試みで実に圧巻でした。来られた長崎っ子の口から「こげんとは初めて見たばい」という感動と驚きの声が上がりました。そうです、踊町毎の龍たち、オランダ船、南蛮船、唐人船、御座船、鯨の潮吹き、コッコデショ、傘鉾…ここはどこの国?どの時代?と見紛うばかりの出し物が勢揃いしたのです。みんな感動しました。
 コロナに抑圧されていた起死回生の打開策でしたが、瓢箪から駒の例えを思わせる、思いがけなくもダイナミックで魅力的なイベントとなりました。とはいえコロナは早く終息して来年こそは町のあちこちで暴れ回る長崎っ子のエネルギーを見たいものです。「長崎くんちもってこーい(*2)」の秋でした。



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