ネオンストーリー

 Vol.66
睡魔 梁石日著 幻冬舎刊
 

「うむー」
 趙奉三は腕組みをした。いまひとつ納得できなかったのである。ネズミ講との分岐点はどこにあるのか曖昧だが、逃げ道ではある。また所長にならない限り、直接販売した分しか配当金は入らない。要するに、いかに店子を増やしていくかである。

 李南玉は書類の他にパンフレットを三人に三十冊ずつ配った。「パンフレットも来週中に一千冊送ってくるさかい、必要な冊数を言って下さい。届けます」健康マットの全体図と断面図と機能の要点を簡潔にまとめたわかりやすいパンフレットだった。

 事務的な用件がすむと李南玉は先に立ち上がった。そしてこれみよがしに懐から札束を出して勘定を払った。安くない店だが見栄っ張りの李南玉にとって、それがステータスであった。

 外に出た李南玉は空を見上げ、歓楽街の色とりどりのネオンの輝きに幻惑されたように、 「さあ、明日から戦争や。われに勝算あり。おっさん、もう一軒飲みにいこか」と、みんなを誘った。 

 

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