特別報告

 Vol.68
ISO取得 取り組みから認証まで   「「「「 当社の場合
  アオイネオン(株)代表取締役社長 横山 巖
ISO認証取得と目的

 当社は、浜松支店及び浜松工場で平成13年7月にISO-14001(環境)、11月にISO-9001:2000年版(品質)の認証を取得いたしました。
浜松工場での認証を選択した訳は、当社の主力工場として工業団地という恵まれた立地にスタートしたからです。審査機関はムーディー・インターナショナル・サーティフィケーション、認証機関は英国ユーカスです。
 企業がISOの認証を取得することは世界的な流れになっており、特に国際取引においては最低限の身分証明とさえなっています。

 当社がこのISO認証取得にチャレンジした理由はいくつかあります。
ひとつは、企業としての責任を果たし社会に貢献するという理想の追求。
二つめは、取引先に対して企業としての信用の向上、製品の信頼度の向上を図る。
三つめは、懸案だった社内の機構の整備や、業務全般のマニュアル化の実行が果たせる。というものです。

ISOの誤解と実際
  実は私は当初大きな誤解をしていました。ISO-14001認証の前提は、有害な廃棄物を一切出さない水準を達成すること。ISO-9001認証は、高度な品質維持や管理体制が整った証である。このように思っていました。同じ誤解をしている方は意外と多いのではないでしょうか。

 実際には環境ISOでは、塩ビを使ってはいけないとは要求していません。徐々に減らすという目標に向かって実行していることが合格条件なのです。

 例えば「当社は塩ビの使用を毎年20%削減し5年で全廃する」というような目標を自分たちで立てて、改善を継続して実行することが、審査の対象なのです。その他に審査対象となる重要事項は、法律を遵守する、環境汚染の予防に努めるという約束を守ることです。ポイントは、目標値は自社で決める、結果を数値で集計し改善を継続させることなのです。

 この基本は品質ISOでも同様です。品質の向上を目指し、ミスや不良品の発生を押さえるための目標を自分たちで立てて、改善を継続して実行することなのです。

 ISOでやることを簡単に言えば、以下の通りです。
 @ 会社の方針を決めること。(品質方針、環境方針)
 A 会社の現状を分析して、自社としての目標を設定する。(数値的な目標)
 B 業務のマニュアル化を果たしルールを作る。
 C 改善を継続して実行していくこと。(定期的に目標達成度を集計)
 D 関係法令を遵守すること。
ISOは認証を取得しても、定期的な継続審査があります。継続して実行されていなければ、認証は取り消しになります。一旦免許をもらえば、最新の知識も習得せず手が震えるようなご老体でも、医者は医者という納得しがたい制度に比べたら、なんと公正なことでしょう。

PDCA
  PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(検証)→ACTION(見直し)

 PDCAが繰り返される、それがISO活動の基本です。よく考えると、これは多くの企業で日常行なわれていることではないでしょうか。ISOを何か特殊なものと考える必要は全く無いのです。

 日常の当然の行為だとつい軽んじてしまうものですが、国際規格であり名誉なことだという錦の御旗が人の見る目を変えさせるのでしょう。これを良い意味で活用することが肝要だと思います。

ISOの効果その1
  ISOのマネージメントシステムは大きなエネルギーを要しますが、会社の負担になっては本末転倒です。
ISO認証という名誉だけでは会社は潤いません。言い換えると、儲かる仕組みを作るための手段としてISOを利用すべきなのであって、ISO認証が目的であってはいけないと思います。

 当社では環境目標に産廃の削減を掲げ分別を徹底した結果、処分費用の減少を果たしています。品質では実行予算を下げる数値目標を掲げ達成率を集計しています。
また、業務のマニュアル化を通じてスタッフが仕事に習熟する効果をあげつつあります。

ISOの効果その2
 認証取得までには極めて多くの作業があり、スタッフはハードな業務をこなしてきました。彼らが目を輝かせて成果を語るのを見てもうひとつの目的が果たされつつあるのを感じました。

 よく「会社の財産は人である」と言われます。
仮に社員10人のうち能力のある社員が1人しかいないとしたら残りの9人は無駄飯食いです。
優秀な1人は放っておいても情熱をもって仕事に取り組みます。
この優秀な1人とあとの9人との違いは何でしょうか?私は実力はさほど違わないと思います。何故なら彼らはみな自分の趣味や家族のことには驚くほど熱心に疲れを知らず取り組むことができるのですから。
彼らは能力が無いのではなく、力を発揮していないだけのことなのです。
 そこで私がすべきことは、この9人をどう誘導するかだと思い至りました。
教えるとか育てるとかではなく、その気にさせることだと考えました。
その気になると自分で勉強し勝手に成長していきます。
そのための施策をいろいろ実行しているのですが、このISOにもそういった効果があったのです。

会社の経営理念
 会社の経営理念やビジョンは経営者の自己満足やPRのためではなく、社員が働くうえで心の拠り所、或いはモチベーション維持のためにあるべきだと思います。
当社ではこれまで、社会への貢献、果たすべき責務などを掲げてきました。
しかし絵空言に終っていた感は拭えません。

 具体性を伴ったもの、身近にひしひしと感じられるものでないと、社員にとっては興味の対象外となります。ISOをきっかけに品質方針や環境方針を定めましたが、これを元に具体的な目標が打ち出され俄かに身近に迫ってきた感があります。
 こんな現象もISO導入あってのものではないかと思いました。

コンサルタントと審査機関
 ISOを導入しようという場合、コンサルタントは必須です。
車の免許を取るのに教習所が必須なのと同じです。しかし今日ではISOという規格自体が大きなビジネスになっています。そのためコンサルタントの良し悪しを選択することが運命の分かれ道になるのです。

 そこで選択のコツですが複数のコンサルタントにあたり、ISOに対する考え方を聞き見積を取ることです。
ISOはマニュアルや文書管理が極めてシビアで大きなエネルギーを要します。これを必要以上に膨らませシステムを複雑にするのは、コンサルタントにとってはプラスですが、会社にとってはマイナスです。
それを見極めることです。

 審査機関の選択も重要です。落とすための審査をしてあら探しするところと、ISOを活かすためのアドバイスをしてくれるところがあります。
しかし、審査機関の質は我々には判断がつきません。
即ち、よい審査機関の選択をしてくれるコンサルタントを選ぶことが一番大切なことなのです。

終わりに
 当社のわずかな経験を披露しましたが、まだまだ駆け出しであり本当の効果はこれから、本当の苦労もこれからなのだろうと思います。
少しでも参考になる部分があれば幸いです。

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