ネオンストーリー

 
  北朝鮮「楽園」の残骸
マイク・ブラッケ著 草思社 刊

 冬になって、町からほとんど色が消え、灰色のコンクリートが非現実的な雰囲気を作り上げるとき、人はよく鬱病に悩まされた。そのなかで、党のプロパガンダのポスターや壁に書かれた標語やスローガン、あるいは建物の屋根に取りつけられたネオン広告だけが、平壌の単調な風景にわずかな彩りを添えていた。式典のときなど、伝統的な民族衣装をまとった女性たちの、派手で華やかな姿を見ることもあった。しかし、そういう色の洪水を目にする機会はこの国ではごく希だった。
 色彩の単調さは人々の制服も同じだった。灰色、茶色、くすんだ緑色が北朝鮮の人々が身につけている色だった。婦人警官など少数の例外を除けば。交差点の真ん中に立って、しゃちこばった動作で交通整理にあたる彼女たちの制服の鮮やかなブルーは見る者の目に真っ先に飛び込んできた。首都の交通量は緩慢にではあるが確実に増加していった。

 
 

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