特別報告

 

ニューヨーク・オーランド視察
ニューヨーク市建築局訪問記

  会長 板野遵三郎


 ニューヨークの屋外サイン視察は、今回の視察旅行の一つのハイライトでありました。
タイムズスクウェアのあのきらびやかなサイン達は、一体どういう法規制のもとで管理されているのか? ニューヨーク市の屋外サインの許認可を一手に行っているニューヨーク市建築局を訪問して、屋外広告物行政について説明を受けました。


1. 訪問日時:2004年4月14日(水) 10〜11時
2. 訪問先:ニューヨーク市建築局(NYC Department of Building=DOB)
3. 先方説明者:都市査察局副局長 ロバート・イウロ氏(Mr.Robert Iulo, Assistant Commissioner Citywide Inspector) ,サイン管理グループ副部長 スーザン・ロング氏(Ms.Suzan Long ,Deputy Director Padlock/Sign Enforcement Unit )、他1人(Ms.)


ニューヨーク市の屋外広告物行政のあらまし

 ビルディングコード (Building Code=建築法 )とゾーニング(Zoning=用途地区)
 ニューヨーク市のサインはビルディングコードとゾーニングよって大変に複雑な規制がなされている。ゾーニングは都市計画局によって定められ、ニューヨーク全体を、@住居地区(R) A工業地区(M) B商業地区(C)に区分し、それぞれを数多くのゾーンに細分化して、R1,R2,R3...., M1,M2,M3...., C1,C2,C3....と番号が付けられている。さらにそれ以外に、特別用途地区が定められている。それらすべての区域に対してビルディングコードによってサインの基準が定められている。

 各地域共通の規制
サインのほかに、ひさし、テント、旗を対象とする。チラシや張り紙は対象外である。(これらは衛生局の管轄である。)
6 ft2 以下のもの、ビルに直接描くものは許可の必要なし。
突出しサイン 道路への突出し2ft以内、歩道から下端までが8ft以上
壁面サイン  道路への突出し1ft以内, 歩道から下端までが10ft以上
 各地域共通の規制
@ 住居地区
媒体広告は不可
名前、住所の表示の自家広告で、1ft2以下のものは可
自社ビルにはサイン1個まで、オフィスビルでは2個まで
突出しサイン 道路への突出し1ft以内
高さは地面から20 ft 以内
A 工場地区
ウィンドウの電飾サインは8ft2以内、点滅は不可、3個まで
電飾なしのサインは1200 ft2以内、電飾サインは500ft2以内で、点滅は不可
突出しサイン 道路への突出し1.5ft以内、壁面サインは道路に1ft以内
高さは地面から電飾サインでは40 ft 以内、電飾なしのサインは、75ft以内
B 商業地区
商業地区でも、媒体広告が不可の地区も一部ある。
ウィンドウの電飾サインは8ft2以内、点滅は不可、3個まで
電飾サインの大きさ
制限なしの区域、500ft2以内の区域、50ft2以内の区域、全く不可の地域、点滅が不可の地域などがある。
電飾なしのサイン
制限なしの区域、750ft2以内の区域、500ft2以内の区 域, 150ft2以内の区域, 150ft2以内の区域などがある。
高さ
制限なしの区域、58ft2以内の区域、40ft2以内の区域、25ft2以内の区域などがある。
C 特別用途地域
ミッドタウンマンハッタンや、国連ビル地区といった36の特別用途地区が定められており、それらすべてに対して別個にサインの基準が定められている。
D タイムズスクウェア
特別用途地域の中でも特殊な地域で、サイン、特に電飾サインが奨励されている。
ビル1階には、1個以上の電飾サインが必要。
広告面積の比率が一定以上必要
電飾サインの照度を一定以上に保つことが必要で、そのための測定器具。測定方法まで定めている。
日没から午前1時までは最低点灯すること
Marquee(劇場前のひさし)は500ft2以上とし、そのうちサインは200ft2以上とする。
突出しサイン 道路への突出し8 ft以内
等々、広告効果を最大限に発揮できるように格別の配慮がなされている。
 屋外広告物行政についての説明
許可申請には、詳細な図面を含むサインプランの提出が必要である。
サイン設置場所のゾーニングとサイン規制は、インターネットでチェックできる。また申請手続きもWEB上で行える。
条例の改正によって既成のサインが非合法となってしまう場合は、例外として継続が可能となる。スポンサーの交代などで製作し直す場合も、大きさや仕様が以前と同じであれば認められる。2年間以上のブランクがあると許可は取り消しとなる。
 違反広告の取り締まり
  違反物件の取り締まりは、2人の担当官(本日の説明者の女性)と5人のInspectorの計7人で行っている。
Inspectorは、サインだけではなく建築延滞のInspectionも同時に行っている。
主に一般市民からの通報でアクションを起こす。
違反に対する罰金は広告サインでは最高25,000ドルと高額である。

【質疑応答】

Q サインのコンテンツについての規制や指導はあるか?
A 表現の自由を優先するため、規制はない。ただ余りひどいものについては市民からの抗議が厳しく、変更せざるを得なくなる。
Q 違反物の撤去に応じない場合はどうするか?
A 違反の罰金は、日数が経過するとどんどん高くなる仕組みである。どうしても撤去しないものに、おおいを掛けたケースもある。
Q サイン許可の手数料はどれほどか
A 収入源とは考えていない。地下鉄や道路サインについては収入源としている。


【所感】
 説明を受けた範囲で、感じたこととして、
サインの規制が、建築の基準の一部に有機的に組み込まれていること。一般市民の意見を受け入れるシステムが確立していること。少数のスタッフで効果的に管理している。ここでも女性の活躍がめざましい。 我々の最大関心事である屋上サインについての条項はほとんど無い。インターネットの利用が効果的に行われているようである。タイムズスクウェアの広告を活性化しようという行政サイドの姿勢に、大いに感服しました。大変に細かく規制されていることはわかりましたが、あまりに複雑でどこまで説明を理解できたかは疑問です。日本の条例の方がわかりやすいともいえそうです。前号NEOSの大戸さんのコラムにあった「Poor なサインからはPoorな業績」というコメントが印象的でした。
 帰りがけに、「DOB」のマークの入った野球帽を各人にプレゼントされました。これもアメリカ流の遊び心と、感心致しました。

 

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