講演より

関東ネオン業協同組合秋季経営セミナー(H16.10.26)より
屋外広告の今後と我々の進むべき道(X)
武山良三氏
国立高岡短期大学産業デザイン学科 教授
SDAサインデザイン協会常任理事


街づくりの一環

 最後になりますが、地方というのは中心市街地の衰退や、商業施設の郊外化が顕著に出ているわけです。郊外店でネオンを使っている所は少ないんですよ。どうしてもコストを大幅に下げて今風のフランチャイズ独特のパターンをどーんとあてようということなので、外形照明とか、建築のラインを出すとか、いくつかの事例はあるようですが厳しい状況にあると思います。そうしたときに、先ほどのゆらぎという感覚からいくと、街づくりの一環の中でうまく活用する方法がないかなあというのは、希望的観測ですが、ご検討いただけないかなというとこなんですね。
 街というのはどういうものかというと、基本的にいろんな人が集まるところが街じゃないかと思うんですね。最近“市民”という言葉が街づくりではよく使われます。景観審議会なんかでは市民と協働による景観作りをしましょうとか、景観緑三法でも市民を取り込んだ協議会を作って地域独自のサインを作るという事を奨励しているわけです。

キーワードは市民
 市民というのはキーワードになるのではないでしょうか、じゃあ市民って誰というと、なかなか難しいんです。例えば高岡市という市に属しているのが市民なのかというと、そうでもないような気もします。一方で住民と言う言葉がありますが、これも読んで字の如く住んでる人なわけです。街というのは住んでる人だけじゃだめなんです。通っている人とか旅で通過する人とかいろんな人がいると。
 昔の人はえらいなあと思うんですが、漢字というのは本当に意味を持っているんですね。“市”はこれ、マーケットなんですね。要するに生活を共にするということの民。例えばインターネットでどんどんやるという事をライフスタイルにしている人は、地球市民、インターネット市民なんていう呼び方ができるわけですね。要するにどういうカテゴリーでいくかということですが、いずれにしてもここで重要なことはそういう人が寄ってコミュニケーションするということなんです。コミュニケーションするということはできるだけ自分と違う考え方、多様な考え方に触れて、そこで議論をするということが重要だと思います。

データの三角形とは
 データの三角形というのがあるんですが、今情報化社会でいわれているデータとは何かというと、それは事実でしかないと思うんです。それそのものではなんにもならない。データが認知、認識されると情報になるんですね。例えば英語で書いてあると、英語が分からないと認知化できませんから何の意味かわからない。英語を知ってるということで情報として認知されるわけですね。
 次に整理。秩序といってもいいですけど、そういう沢山の情報を自分なりに整理して組み合わせていくと知識になっていく。それをよく考えてみると知恵に昇格していくと。
 最後は一番最初に言った志。じゃあこの知恵から意志に行くにはどういう行為が必要か。これが対話なんですよ。ぱっと認知するっていうのはもう皆さんだったらたやすいことです。整理するのはちょっと労力要ります。熟考は結構労力いる。対話はね、ものすごい労力要るんですよ。逆三角形なんですね。
 要するに言いたいのは、情報化社会といわれてますが、それがほんとに正しい情報になっていくには、例えばどんなものが売れるかと、千軒の家庭を調べても次に売れるかどうか、そんな保証はありません。ここで大事なことはそれを売りたいかということなんです。あるいは売らなければならないかってことなんです。
 よく言われることですが、ほんとに豊かな生活をしたことない人に豊かな生活ってなんですかって?聞いてもわかるわけがないんですよ。リゾート法の時も 言われましたが、リゾートに行ったことがない人がリゾート開発やって、できるわけないんですよ。ということは、本当にこれからの社会に必要なものがこれだ、ということを自分たちで体験していないと提案できるわけないんですよ。だからマーケティングというのはデータのマジックなんです。いくら調べてもそれはあくまで事実。そこから何をするかは皆さんの問題なんですよ。

豊かなコミュニケーションからアイディア
 そこで最終的に大事なことはコミュニケーションなんです。コミュニケーションがしっかり行われていない業界や地域は必ず衰退します。活性化しているフランスの地方都市などはすごくコミュニケーションが豊かなんです。街角のパブやカフェでいろんな人がいろんな形でコミュニケーションをとっている姿を日常的に見ます。そういったところから次のアイデアというのは出てくるんですよ。いろんな人の意見で喧喧諤諤と、こういったところから本当の方向性が出てくる。これをやっぱりやらなければいけないと、自分にやる気を課せられるかどうかというのもこれだと思うんです。自分一人でやり遂げようなんてできるわけないですよ。やっぱり人と一緒に何かをやって、その中で自分は一つ重要な役割を担うんだということで、初めて活性化していく、そういうことにつながっていくんじゃないかなと思います。
 地方都市にとってもこういうことは重要なポイントですから、できるだけ出会いがあるような環境を作りましょうと。それこそ飲み屋でもいいんですよ。じゃあ、ネオン輝く飲み屋の計画を作ってください、こんな楽しいものができるじゃないですかと。地方都市で物販はもうだめです。中心市街地で物販をするのはものすごくリスキーなんですね。だけど、食い物系、飲み物系はまだ可能性が残ってます。とにかく人がコミュニケーションがとれるスペースを作りましょう、ということはね、これはやらなければだめなことです。これで地方都市は必ず活性化します。長くなりましたがどうもご清聴ありがとうございました。
<質問>
..どうもありがとうございました。非常に新しい切り口、いろいろなおもしろい見方をご紹介いただけたと思うんですが、これから都市部では高層建築が非常に多くなって、屋外広告物はどうなるんだろうという事前の質問がございまして、それについてよろしければ…。

 また難しい質問ですね。いろんな委員会に出させていただきましたが、逆風は大変強いですよ。屋外広告物を基本的に良しとする大学の先生や、行政担当者というのはいません。基本的には排除したい、少なくしたいという風に考えているわけです。ほっとけば、どんどん縮小せざるを得ない状況になることは充分に予想される。そこでどうしたらいいのか。私は、味方を増やすことしかないと思います。味方というのは広告主であり、消費者であると、それしかないんですよ。
 こういうことを一つ一つこなしていくということも大事ですし、例えばネオンの良さを子供たちにもっと触れさせる機会を作るなんていうのも非常に長いスパンですが大事なことですね。ですから、職人さんもなかなか仕事がないのであればそれを教育のプログラムに仕立てるにはどうしたらいいかということを考えてもらったりしたらどうでしょう。学校側は、そういう面白い提案が出てくるのを待ってます。総合学習なんかでなかなか成果が上がらなくて困っている。あるいは年齢層が上の方でも、ネオンで自分たちの作品ができますよ、あるいはネオンでクリスマスデコレーションを作りませんか、と、それを我が家にどんどん置いていって、この地域でクリスマスの楽しいイルミネーションをやりませんかとか、そういうことをやっていく。そうすると、広告物やネオンに対するイメージが変わるわけですよ。ちょっと気が長いですが根本的なボディブローじゃないけどお腹に効くような行動をやるべきなんです。
 アメリカのインターネットを見ても、地域のバスケットボールチームを広告会社が支援してる、そういう事例がたくさんあります。やっぱり仲間に引き込んでるんですよ。それこそ行政の担当者を仲間に引き入れて、これは必要ですよって、コミュニケーションしてもらうしかないと思いますよ。それをしなかったら絶対アウトです。

(終)

Back

トップページへ戻る



2005 Copyright (c) All Japan Neon-Sign Association