インタビュー

柏原エリナ 氏
身にまとうネオンを夢見て
柏原エリナ氏
1982年愛知県立芸術大学卒業。造形作家伊藤隆道(前東京芸大副学長)アトリエMOV入社。退社後レーザーアーティスト田中敬一氏とK-one speace設立。ウィンドウディスプレイから公共空間の造形作品やイルミネーション等数多く手がける。同時に「身にまとう光のアート」を制作しネオンアーティストとして、またジュエリーデザイナーとして海外へも発表し続けている。
 一昨年、カレッタ汐留のエントランス吹き抜けの壁面に登場して話題を呼んだ「ネオンアートの熊手」。その作者が柏原エリナさんです。新名所に、縁起物で、しかもネオンアート。あっと驚く鮮烈な作品は好景気を呼び込んでくれそう…。ネオン業界にも久々に明るい話題を提供してくれました。

―― ネオンアートの熊手。意外性があって楽しい作品ですね。
 カレッタ汐留の1周年記念ということで、お話をいただいたのがすでに9月。11月初めには完成といわれて、なにしろ時間がない。「福を掃き込む」ということで熊手を題材に、というのはすでに決まっていました。ネオンアートはオープン時にも館内演出され、常設でもウインドウに飾られています。それで熊手もネオンで造ろうということに。そしてカレッタという名前の由来がウミガメの学名「カレッタ・カレッタ」に由来しているということで、熊手の真ん中にも亀がいますよね。でも私自身熊手というものに馴染みがないので、細部がよく判らないんです。あわてて勉強しましたよ。最初はアメリカのネオンアーティストに依頼されたそうですが、先方は熊手という物がさらに理解できない。それで巡り巡って私に回ってきたお話でした。私の台湾や名古屋のネオンアート展の作品を見て頂いていたようです。

―― 制作のご苦労は?
 時間がなかったこともそうですが、アメリカのジョン・ジャーディの設計したカレッタ汐留ビルは壁面に何か取り付けるようにはなっていないんです。どうやって取り付けたらいいかわからない。落下は絶対避けたいですし、想像以上に大変でした。ネオン管は(有)コーワネオンの佐々木昭一さんに、その他の構造フレームや飾り物などは(株)イケダネオンの池田勝哉さんに随分お世話になりました。最初は平面図ではなかなか理解して頂けなくて模型を作って持っていきました。熊手の取り付け、取り外しがもっと簡単だったら毎年少しずつ大きくしていくことも出来るのではないでしょうか。そういうことも想定してはめ込み式にしたのですが…。残念ながら1回限りでしたね。

ネオンの熊手「万・来・光・祭」(幅2.2m。高さ2.5m)。目黒の鷲(おおとり)神社から祈祷式も執り行われ開運招福・商売繁盛を祈願。(写真左)
音に反応して光るオブジェ。ピアノの上にも置ける。小さいものは装身具としても注目を浴びている。(右)

―― ネオン管の制作はなさらない?

 私の若い頃は日本ではネオン管曲げを学ぶには職人さんの弟子になるしか方法がなくて、しかも女は仕事場に入れない、そんな時代でした。 大学卒業後東京に出て、あちこちのネオン屋さんに管曲げを教えてくれないかと当たってみたのですがダメで、リタイアした管曲げ屋さんに暇なときにちょっと教わる、それくらいしか手だてがなかったんです。
 アメリカに管曲げを教えてくれる所があると聞いて2001年2回、奨学金を得てシアトルのピルチャックガラスアートスクールで学びました。しかし、排気の設備などを個人で持つのはスペース的にも金銭的にも難しい。自分の工房ではエアバーナーでトンボ玉をつくるのが精一杯ですね。でもピルチャックで学んだことはとても役だっています。作り方が分かっているので「こうして欲しい」と、遠慮しないではっきり言えますから。

―― 光のアートというと比較的新しいジャンルですね?
 ビジネスとしてはモニュメントやジュエリーデザインをしていますが、本当にやりたいのはは『身にまとう光のアート』です。20年近く作品を作って来ました。
 ただ点滅するだけじゃない光ということを模索していくとインタラクティブ・相互作用によって光が変化をする、例えば身につけた人の動きに呼応したり、音声に合わせたり…。触れることによって、有機的に変わっていく。
 一昨年12月にワコール銀座アートスペースで「身・体・発・光」というタイトルで、人間の生命反応に呼応して様々に表情を変える光を使って、人間の内包するエネルギーや精神性などを造形化して、アクセサリーやコスチュームとは違うアプローチのボディオブジェを表現しました。そこでは最近積極的に取り組んでいるオリジナルガラスをフューチャーした作品も出展しました。
 その数ヶ月前には、アメリカのガラスアートソサエティ「第34回アニュアルカンファレンス」のガラスアートファッションショーに。その作品を持って日本から一人だけ参加しました。エキサイティングなファッションショーで、作品はお陰様で大好評でした。
 ネオンアートというものは未だはっきりアートとして認識されていないようですね。アートの分野というよりディスプレイ的な仕事として認識されているというのが実情ではないでしょうか。もっとネオン作品が光のアートの1つとして発展していくといいなと、思っていますが。我々のつくるものはコンセントに繋ぐアートなんです。ですから電気系統のトラブルも起こりますが、私はいつかはネオンで身につけるアート作品を造ってみたいと願っているのですが、作品をベストコンディションに持っていくためにも安定したメカの制作は大切だと思います。

―― 明日から海外へ行かれるそうですね。(インタビューは昨年8月8日)
 ええ。こんどはアメリカのノースカロライナにあるペンランド・クラフトスクールで1ヵ月、やはり奨学金で、バナーワークを勉強してきます。やりたいことのためには情報を捜して、そのために必要な語学も学んでいくしかないですね。

SHINO・柏原エリナ展
bijoux-身につける装置をテーマに2人展
声や音に反応して光が点滅するブローチなどを展示
4月17日(月)〜28日(金)
会場:四谷ギャラリー晩紅舎(新宿区1-4綿半野原ビル1F Tel 03-3357-7480) http://light.asablo.jp/blog/

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