インタビュー

井原理安氏
もっと面白くなるこれからのサイン
井原理安 氏
(社)日本サインデザイン協会(SDA)会長
(有)井原理安デザイン事務所代表
 昨年、SDA発足40年の節目に会長に就任された井原理安氏に、池袋にある氏の井原理安デザイン事務所でお話を伺いました。

―― SDA発足40年ですね。この40年間はサインの概念がどんどん変化していった40年なのではと思いますが、まさに井原さんご自身が体現されてこられたのではないですか?
 そうですね、11年前に独立するまで、広告代理店からサインのメーカーに入ってトータルサインのプランニングの立ち上げに係わりました。以前のデザインは手書きで溝引きと筆で描いてましたよ。今でも持っています(笑)。CIの時代がきてサインに対しての意識が大きく変わってきました。
 SDAは最初「日本サインデザイナー協会」だったんです。屋外、屋上のサインは、当時は著名なデザイナーがやっていた。サインのメーカーの中にデザイナーはいなかったんですね。翌年には「日本サインデザイン協会」と名称を改めました。現在はデザイナー、学識者、サインメーカー、資材メーカー、広告代理店、建築関係と協会員が多様になってきました。

―― サインが一般にも認知されてきたということでしょうか。
 サインはそうですが、サイン業界はどちらかというとマイナーな業界です。建築会社から図面をもらってその通りに作る。そういう今までのやり方じゃなく、逆にオーナーの考えていることを聞いて提案していく。ビルワンパックをトータルに提案していく。

―― サインデザインに象徴されるロゴマークは、とても高額という印象がありますが。
 発注者側がデザイナーの名が欲しいとか、ブランドが欲しい場合はそうですね。多くはサインのデザインはお金がとれない。マークやロゴタイプは看板以外にも使ったりするでしょ。でも製品にインクルーズするか、サービスにさせられてしまう。デザインの設計もゼネコンはほとんど認めてくれなかった。いわゆる啓蒙活動をしてデザインを有料にしていった経緯があります。景気も良かったが、前に出ていくことでデザイナーを表の仕事にしていく。営業トークも必要ですし、企画力も必要です。そうしないとデザイナーが育っていかない。

―― これから、SDAはどんな展開を目指していかれるのでしょう?

 根元的な話になってしまいますが、サイン業界を良くしていきたいですね。人が育っていない。若い人が興味を持って、サインって面白いよ、と思えるように社会に訴えていく。それには、サインデザインの「有料化」ということはとても重要です。業界の中で、若い人を活かす努力をしていくことが大切です。これは会社の中でも言えることだと思います。

―― ネオンサインに対して、またネオン業界に対してご提案いただけますか。
 ネオンはいいと思いますよ。例えばヨーロッパの空気の中ではとても映えるんですね。日本では景観を壊している場合がある。いいものを作っていくには、ただ目立てばいいのではなく、発注者にも勇気を持って言っていくしかないですね。サインの専門性を持って、同じテーブルについているわけですから、意見を言える立場にしていく。面白く楽しく仕組んでいくことが大切です。
 商業サインはもちろん、広告するということが優先なんですが、良いデザインを世の中に出していくことで、皆が楽しめる。それが商売につながればなお良い。商業デザインというのはみんなに理解してもらい共有するということが一番大事です。

―― 今おっしゃったみんなというのは一般消費者ということですか?
 そうです。受ければなんでもいいのか、それが正しいのか、どうか。一般の人たちの理解と共感を得なければ変わっていかない。例えば JRでも公共空間なのに広告が混在している。ガマンして守るべき公共空間は守ってもらいたい。

―― OOH(Out Of Home)の審査員や、空間デザイン機構の立ち上げにも関わっていらっしゃいますね。
 それもみな若いデザイナーを育てていくことになると思っています。
 空間デザイン機構は4つの団体が一緒になって立ち上げたものです。話は10年前からあったんですが昨年やっと形になった。来年の「KUKAN賞」にむけて詳細をつめているところです。
 サインの重要性は社会的にますます高まっていく。サインはもっと面白くなっていくと思いますよ。
―― サインの未来に希望が持てますね。本日はご多忙中のところありがとうございました。

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