World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.180  内側から見たオランダのサインデザイン
内側から見たオランダのサインデザイン
 ひと昔前になるが、2011年に文化庁新進芸術家海外研修制度でアムステルダムにあるマイクセナール (mijksenaar) というサインデザイン会社で研修する機会に恵まれた。マイクセナールはスキポール国際空港やオランダ鉄道など公共交通機関から美術館や病院などのサインを手がけるオランダを代表するデザイン会社である。ロジカルで体系だったサインシステムとデザインは分かりやすく国内外で高い評価を得ている。
 オランダはイギリス、フランス、ドイツと大国に挟まれたベネルクスの小国ながら、新しい文化や精神を積極的に受け入れてきたヨーロッパでも存在感のある国である。まさにその精神が感じられるこの事務所は、私がいた当時30人程度が在籍し、国籍もドイツ、スペイン、イタリアと様々で、海外のクライアントも多いため会話は全て英語であった。社員は若い人からベテラン層、半数以上は女性で、子育て世代や妊婦の人などと幅広く、週に2、3日出勤する人や都合がつかず子供を連れてくる人など、働き方も柔軟でオープンな雰囲気があった。全社員が昼食を共にすることで社内のコミュニケーションを図り、風通しの良い仕組み作りにも力を入れていた。久しぶりにウェブサイトを見たら見覚えのある名前が多くある。社員が働き続けやすく、働き続けたいと思える会社なのであろう。
 内側から魅力的な会社が、社会に対し価値ある提案をしていける強さ。そんなことをスキポール国際空港の写真を見ながら思いだした。
田嶋佳子





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