World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.182  ドイツ連邦保健省によるAHAキャンペーン
人をサインシステムに─動くインフォメーションの導入─
 この記事を書いている8月27日現在、ドイツでは1日の新型コロナ感染者数が増加しており1500人を超え、パンデミックの収束が見えない状況である。とはいえ、第一波でヨーロッパ他国と比べ死亡率を抑え医療崩壊を防げたドイツでは一定の落ち着きが見られている。その要因の一つに国と国民との良好なコミュニケーションがあるのではないかと私は考えている。写真はその一例で現在ドイツ全国で、街頭ポスターやウェブサイト、SNSを利用して展開されているAHAキャンペーンである。
 AHA(アハ)とは、ドイツ語で「なるほど」や「そうか」という意味の言葉である。このポスターのAHAは、A=Abstand(距離)H=Hygiene(予防衛生)A=Alltagsmaske(口と鼻を覆うマスク)のそれぞれの頭文字を並べ、覚えやすくしたキャッチコピーである。イラストからも他者と1.5mの距離を意識すること、手洗いやマスクの必要性が分かりやすく示され、「AHA方式でこの夏を乗り越えよう!」というフレーズが添えられている。人との距離を保つことや手洗いはパンデミック当初から繰り返し言われ、4月からは店舗など特定の施設内と公共交通機関内でマスク着用が義務になっており、ポスターに書かれた3点の内容を知らない人はいないであろう。とはいえドイツ語が理解できない外国人や、理解できても対応しない人もいるので、徹底した周知が続けられている。
 ドイツ人の挨拶は握手やハグで、マスクをする習慣は全くない。このような長年培われた慣習を改めるのは容易なことではないであろうが、理解を高め行動を促す上で、様々なシンプルで分かりやすいキャンペーンが一定の効果を上げていることは間違いないだろう。
田嶋佳子





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