World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.196  ロートアイアン・サインが映えるエギスハイム
ロートアイアン・サインが映えるエギスハイム
 ドイツとスイスの国境に位置する、フランスのアルザス地域圏。数々の戦争によりフランス領になったりドイツ領になったりとその歴史的変遷により独特な文化を持つ地域である。ワインの産地としても有名で、葡萄畑ののどかな美しい風景が観光地としても人気である。
 写真は「フランスの最も美しい村」に名を連ねるエギスハイム。城壁に囲まれ、カラフルな木組の家が立ち並ぶ中世から続く歴史ある村である。
 ここで発見した錬鉄でできた突き出し看板。日本ではロートアイアン・サインと呼ばれるがドイツ語圏では「鼻看板」とも呼ばれている。鼻のように壁から突き出しているからだ。このロートアイアン・サインは道のどちら側から見ても分かるように作られ、文字はほとんどなく、中世当時は同業組合ギルドの紋章や職種の絵があしらわれた。この写真はプレッツェルのパンからも分かるようにパン屋(洋菓子含む)の看板である。ティーポットの横にはアルザス地方の特産であるクグロフケーキも描かれていてとてもかわいらしい。
 ロートアイアン・サインは19世紀中頃には印刷された錫(スズ)製看板、20世紀にはネオンサインの普及により姿を消しつつあるが、一方で歴史的景観保全条例により守られてきた。中世の街並みが残る観光地では修復されたり新しいものが製作されたりして美しい風景に花を添えている。
田嶋 佳子





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