VOL.39 ベルリン・クーダム通りのネオンサイン

 1990年10月3日の東西ドイツの統一から一年半を経たベルリン訪問時、ブランデンブルグ門の周辺には分断の象徴とされた塔の痕跡さえなかった。
 しかし、そこからちょっと離れたテレビ塀の展望台から四周を一望したとき、東西の違いは歴然であった。灰色のアパートと工場らしい建物群が視界いっぱいに点在する東ドイツ側に対して西ドイツ側は広々としたテ ィアガルテン公園の緑の向こうに立派な近代ビルの立ち並んだ豊かな都市空間が広がっていた。回転レストランでは一目でお上りさんと分かる日焼けした中年の男女が、コーヒーをすすりながら珍しそうに西側の風景に見入っていた。ベルリン一の歓楽街、クーダム通りに初めて足を踏み入れた東側の若者には、ここはオアシスのように見えたことだろう。通りの入り口に近く、ミュージックショップの大きなネオンサインが晴れやかに消費の魅力を謳歌し、若者たちが大勢群れていた。
 統一からすでに6年を経た現在、東西の経済的、文化的格差は縮まることなく、ますます溝の幅をひろげているのがちょっと気になる。自由と豊かさを夢見た東側の人々が知ることになったのは、資本主義社会の厳しい現実かも知れない。
 





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