World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.71  ウズベキスタンの饒舌な墓
ウズベキスタンの饒舌な墓

 ウズベキスタンの歴史豊かな都市、ブハラで宿泊したホテルの裏には大きな墓地があった。この国の墓のありように関心が及び、朝の散歩がてらに覗いてみた。
 入り口に近く、富裕階層のものか、黒御影石の大きな板状の墓碑が並ぶ。機械でエッチングしたのだろう、細かく叩かれた部分の石面が白く浮き出て、人物像と名前のほかに生年、没年が読み取れる。こんな手法がこの国の一般的な墓石のしつらえのようだ。人物像の容貌と服装が墓の主の来歴を物語っていて親近感を覚える。
 まだ若い人物の顔写真に添えて、走るオートバイと車が彫られた墓があった。刻印から、わずかに36歳の若さで早世したこの青年はオートバイと車が趣味だった事がわかる。車はこの国ではかなりの金持ちしか持てないから、この青年の短い人生はずいぶんと恵まれていたのだろう。 
 クサビ形の石面に等身大の女性像を映し込んだ墓にはビックリ。民族衣装で着飾り片手を上げたポーズは自信に満ち、貫禄十分。さながらウズベキスタンの「肝っ玉おっかあ」といったところか。63歳で亡くなっている。
 世界広しとは言えど、こんなに饒舌な墓も珍しい。

 





2001 Copyright (c) Japan Sign Association