World Sign バックナンバー 世界のサイン、遂に出版される
VOL.88  生活に溶け込むヨーロッパのネオン
生活に溶け込むヨーロッパのネオン

 日本のネオンはバブル崩壊以降影が薄い。繁華街のビルの上には裸の鉄骨がかつての栄光を忍ばせるように、憐れな姿をさらしている。考えてみれば、日本のネオンはビル屋上の大型ネオンが主体で、そのスポンサーは高度成長を謳歌する大手企業であった。
 注意して歩けば、商店街や飲食店にプラスチックの行灯サインはあっても、ネオンは意外と少ない。生活に密着した場ではネオンはそう多くないのだ。
 不思議なことに、ネオンが少ないと思っていたヨーロッパの都市には意外なほどネオンの光があふれている。オランダの町々では、古風な街並みにしっとりと溶け込んだネオンの光が目を引いた。バックボーダーもなければ、点滅もしない。多くの場合、文字だけのオーソドックスなサインだが、揺らめきのあるにじんだような光がしっくりと風景の中になじんで見えた。
 元来、ネオンは二十世紀はじめパリで誕生したものだ。そんな歴史を持つネオンサインの光がヨーロッパの街並みに似合わないはずがない。もはや古典的な伝統を持つネオンをヨーロッパの人々は大事にし、LEDなどの新しい技術には見向きもしない。ふるきを尊ぶヨーロッパの精神とネオンは一体のものだったのだ。

 





2005 Copyright (c) Japan Sign Association