インタビュー
若松 浩文氏
若松 浩文
コミュニケーション・デザイン (株)ランド代表取締役
 

ネオンの観覧車がシンボル

 漆黒の闇の中に小さな光の集合体がチカチカと変容しながら点滅を繰り返しています。やがて神秘的な音色に乗せてネオンが輝きだし、リズミカルに動き出します。話題を呼んでいるテーマパーク『八幡SPACE WORLD』の観覧車「宇宙の誕生」のシーンです。プロデュースしたのは(株)ランドの若松浩文さん。

マーケティングの勝負

 コミュニケーションデザインってどういうことですか?とお聞きすると「マーケティングですよ」と言い切る若松さん。遊園地やテーマパークはウイークエンドの昼間なら黙っていても観客は入る。平日の、しかも夜間に訪れる事ができるのはいったいどんな人々か・・・「夜の顧客層を開拓するにはどうするか?そこが出発点でした。」

 電飾は今までも素材として使われてきました。ネオンは技術的にも独自に完成されている。だが、集客のツールとして考えたとき従来通りでは個性に欠ける。もっと別の切り口はないか?という視点から始まったのがスペースワールドの観覧車。暗闇の部分も新たな一色として非常に効果的です。ネオンの色味を抑えてグラデーションにすることで、既成の観覧車とは一線を画した。

 その場所に、そのモノがある“地域の必然性”いかにしたら集客できるか?十分なマーケティングと必然のアイデアを融合させて、実際に形にしていくのが若松さんの手腕です。

 観覧車のスタイルにテーマを持たせたのは初めてのこと。春夏秋冬の季節事にデザインを変え、オリジナル曲も作り、そのメロディに合わせて連動させるストーリー性をもたせ、スペースワールドのテーマである宇宙を観覧車にも取り入れました。

 「光や色をできるだけ抑えめにした。暗い方がより効果的、乗っている方も明るすぎより少し暗い方がいい。」

デザイナーは24歳!

 実際のデザイン担当は24歳の池田光軌さん。入社してまだ1年のニューフェースです。手順は?パソコンの画面を見ながらお聞ききしました。  

「まず絵コンテを描いてそれからCGを作る。観覧車のまるいという形と、ネオン管が5段だという制約があったぐらいで、あとは自由に発想をふくらませました。闇の部分をどう使うか意識しました。光を回すことは、闇を回すこと。ほぼイメージ通りに出来上がったと思います。難しかったのは、音楽と映像のリズムをうまく合わせることですね。現場では、両側のスポークとスポークの間が少し開いているので、裏側のネオンの光が思わぬ効果を出していました。ネオンはよく知らなかったんですが、面白かった。またチャレンジしたいですね」

集客施設ならおまかせ

 若松さんが取締役を務める(株)ランドは、大手建設内装会社の総合企画部門が独立し、この秋で丸5年。16名の少数精鋭で、科学館・企業ショールーム・フェスティバル・レジャー施設など多岐にわたって企画、デザイン、コンサルティングに取り組みます。会社案内には宮崎のオーシャンドーム、和歌山のスノードーム、お台場の水の科学館など大型アミューズメント・レジャー施設が並び、コンサルティングのほか展示映像やホームページの製作なども行います。  

「いかにして人を集めるかという点では、公共の施設であろうが企業のイベントであろうが、また中身が海洋であろうが、山の中であろうが集客のためにどうすべきか?という視点には変わりはないのです。ネオンはこれからも素材としての可能性が大きいと思います」

 若松さんのネクストは名古屋の「(仮称)ラグーナ蒲郡・WSP」。プールとショッピングモールが一緒になった新型テーマパーク。  テーマは「交易です。船とその港に集まる品々ー香水や陶器、そしてそれらを好むのは中高年の女性ーと設定しました。今までこの地域にその年代の人々を満足させる施設(空間)が抜けていたので。それに水辺のあるテーマパークというのは、夏のプール以外、そのせっかくのスペースを他のシーズンに活かせずにいました。それではあまりにもったいない。で、プラスアルファを盛り込んだんです」

 具体的にはどんな?
「船での遊覧とか、船も歴代の帆船を揃えたり、風景の一部としてその水辺が欠かせないモノだと訪れる人が思えるように考えています」 「まだデザインされていないことは沢山ある。そこを探って光をあててやる、あるいは別の側面を見せるーというのが我々の仕事、一つの方向だと思います」

 
八幡スペースワールド観覧車

 

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