インタビュー

ネオンは可能性ある素材
イメージを覆す試みを

李 末竜
グラス スタジオ バルト
ガラス工芸家
李さんとは、東京国際フォーラムのEギャラリー、ネオンアート展の会場でお会いしました。「大きな作品が多いですね。数はちょっと少ないかな。水の中のネオンは実際は水中に入っているのかな?技術的にはそれは可能なんですか?」 名古屋での第一回ネオンアート展ホームページ http://futureneon.tripod.co.jp/
日本語版 P20の作品紹介はホームページからの転載です。

 2000年末、名古屋で開催された第1回ネオンアート展はグラスアートとネオンアートのフュージョンを試みた画期的なものでした。李末竜さんは展覧会の実行委員長。

名古屋でのネオンアート展はどのような経緯だったんですか。

 全く、偶然と幸運の産物でした。たまたま名古屋デザインセンターで新企画を探していたことがあったんです。そして、それまで海外の優れた技術を日本に紹介し続けてきた(株)ロペックス社長マイク・ヤマシタさんとデザインセンターと私の三者の気持ちがスーッと一致してネオンをアートとして捉えた展覧会をしようと、話がまとまったんです。これはきっと、必然性があったということですね。

李さんとネオンアートの出合いは?

 ガラス工芸をやってきて、ネオンアートには興味を持っていたんです。5年ぐらい前ボストンのG・A・S(グラスアート・ソサエティ)総会(世界で約50ヵ国が加盟している最大組織)で、ネオンの部屋があったんです。面白いものだなと思っていた。それからガラスの輸入商社「ロペックス」が主催したネオンアートの2回のワークショップに参加して、ネオン管を曲げて、電極を付ける、まあ初歩的なことを教わった。ネオン管は自由に造形できて、ガスで光る。魅力的な素材だと思いましたね。

 私たちのネオンアートはネオンの技術的としては稚拙だったと思いますが、面白い試みだった。ネオンの電極は単極だったんですが、単極でもっと光らないかなと、思っています。

“ネオンアート”は一般的にまだ認知を得ていない。「企業の広告ネオンの展示をやるのか?」といわれたんですが、よく説明して、理解してもらった。おかげで、マスメディアの取材も増え、それを見て遠方からも飛行機で来てくれた。20世紀の節目にネオンアート展が開催出来て良かったなと思います。

 ネオンの光は存在感があり、発信力がある。もっといろいろな可能性を秘めている。

ご自身はバルト工房を主宰するガラス工芸家でいらしゃいますね。

 ガラスをやりだして30年です。最初はガラス工場で雪駄にねじり鉢巻き、もう徒弟制度のようなところで3年学んだ。吹きガラスなど一通りのことができるようになりました。工場ではそれ以上広がりがない。それから、8年ぐらいはダンプの運転手をやりながらガラスもやっていた。1ヶ月のうち10日はガラス作品をつくって、20日はアルバイトをする、今でいうフリーターみたいなものですね。ガラス製作の割合を段々増やしていったんです。

 35歳のとき、ガラスに集中したくてイギリスに留学しました。車もなにもかも売っぱらって、2年間イギリスで学んで、あちこち見て歩いて帰ってきました。帰りのタクシー代5000円だけ残してね。

 イギリス留学はガラスの技術的にどうのというより作品に対する考え方、メンタルな部分で視野が広がった。それから再スタート。スタッフも入れて本格的に工房を始めたんです。僕のところは愛知県で最初のガラス工房です。

愛知県瀬戸市というと陶器の街ですね。

 周りじゅうが窯元です。最近になってようやく周りにも興味を持ってもらった。地元というのは以外にだめですね。陶器の珈琲カップのとっての部分をガラスでなんてこともやっています。

 ほう珪酸ガラス(商標:パイレックス)を使う技術を3年前から始めたんですが、その技術を使うことによってそれまでの制約が半分以下になりました。制作途中で休んで、また始めるということもできる。それ以前の27年間と随分ちがう。いままで何をやってきたんだろうと思うくらいです。

 情報を常に広く求めて、感度良くクリエイティブに活用する。新素材、新技術というのは大事なことですよ。技術研究会を呼びかけています。第2回のネオンアート展を今年11月下旬あたりに企画しています。名古屋デザインセンターの広いホールで出来ればと考えています。

 ネオンのイメージ、ネオンサインに固定されたイメージを覆すことが大事だと思います。照明の分野でも、ネオンはもっと可能性がある。発光ダイオードと組み合わせても面白いのでは。もっと細いネオン管ができるかな?私たちは単極だったんですが、ネオン業界の方は単極でも光るんだと、逆に思われたみたいです。

 日本で、ガラス技術を学ぶ学校はこの30年間13カ所もできている。あちこちの観光地でガラス工芸のワークショップもできています。富山市立ガラス工芸研究所、東京ガラス研究所ではネオンガスを注入する設備も入っている。ネオンが普通にアートと捉えられる感覚が広がっていると思いますね。

一緒にネオンアート展ができますね。

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